廃棄物処理法の概要と遵守のポイント

〇 廃棄物処理法の概要

◇ 廃棄物処理法の目的

• 廃棄物処理法の目的は、廃棄物の排出抑制と廃棄物処理の適正化を図ることです。このため、廃棄物の概念を定義したうえで、国や自治体、個人、排出事業者等の責務を規定し、適正な処理の方法、委託業者の許可制度、許認可権限者による監督権、罰則などが定められています。

◇ 条文参照

• 廃棄物処理法（2020/04/01改正施行）

条項	内容
1条～5条の8	目的、定義、国民・事業者・国・地方自治体の責務等
6条～10条	一般廃棄物の処理、一般廃棄物処理業、一般廃棄物処理施設等
11条～15条の4	産業廃棄物の処理、産業廃棄物処理業、特別管理産業廃棄物処理業、産業廃棄物処理施設等
15条の5～15条の16	廃棄物処理センター
15条の17～15条の19	廃棄物が地下にある土地の形質の変更
16条～24条の6	雑則
（うち18条～20条)	排出事業者、処理業者等に対する報告徴収、立入検査、改善命令、措置命令等
（うち21条の3)	建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外
25条～34条	罰則

〇 廃棄物の定義及び事業者の責務

◇ 廃棄物とは

• 廃棄物とは、「ごみ、…又は不要物であって、固形状又は液状のもの」と定義され、大きく産業廃棄物と一般廃棄物に分類されます（2条）。
• 不要物とは、自分で使用せず、他人にも有償で売却できないものという意味です。
• 一般廃棄物は市町村に処理責任がありますが、産業廃棄物は事業者に処理責任があります。
• なお、土砂（建設発生土）や放射性廃棄物については廃棄物処理法の対象外となります（2条）。

◇ 産業廃棄物とは

• 「産業廃棄物」とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のことで、次の20種類が指定されています（2条）。

No.	産業廃棄物の種類	具体例　（「工作物の新築・改築・除去」＝「建設・解体工事」のこと）
1	燃え殻	石炭がら、コークス灰、産業廃棄物の焼却残さ
2	汚泥	メッキ汚泥、排水処理汚泥、ビルピット汚泥、下水汚泥
3	廃油	廃潤滑油、廃切削油、シンナー等廃溶剤類
4	廃酸	廃硫酸、廃硝酸、廃塩酸、廃定着液
5	廃アルカリ	廃ソーダ液、金属せっけん廃液、廃現像液
6	廃プラスチック類	廃発泡スチロール等梱包材、廃ビニール、合成ゴムくず、廃タイヤ、廃シート類、廃塩化ビニル管、廃塩化ビニル継手等
7	ゴムくず	天然ゴムくず
8	金属くず	鉄骨鉄筋くず、金属加工くず、足場パイプ、保安塀くず、空缶、金属スクラップ等
9	ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くず	ガラスくず、コンクリートくず（工作物の新築・改築・除去で発生したものを除く）、タイルくず、陶器くず、耐火レンガくず、廃石膏ボード等
10	鉱さい	スラグ、ノロ、廃鋳物砂
11	がれき類	工作物の新築・改築・除去で発生したコンクリート破片、アスファルト・コンクリート破片、レンガ破片等
12	ばいじん	ばい煙発生施設等で発生するばいじんで集じん施設で集められたもの
13	紙くず	工作物の新築・改築・除去で発生した紙くず（包装材、段ボール、壁紙等）、パルプ・紙等製造業、印刷業、製本業、印刷物加工業で発生した紙くず
14	木くず	工作物の新築・改築・除去で発生した木くず（型枠・足場材等、内装・建具工事等の残材、伐根・伐採材、木造解体材等）、木材・木製品・パルプ製造業、輸入木材卸売業、物品賃貸業で発生した木くず、物流で発生した廃パレット
15	繊維くず	工作物の新築・改築・除去で発生した天然繊維くず（天然繊維系のウエス、縄、畳表等）、繊維工業の天然繊維くず（合成繊維は廃プラスチック類）
16	動植物性残さ	食料品・医薬品・香料製造業で原料として使用した動植物の固形状の不要物
17	動物系固形不要物	と畜場の獣畜・食鳥に係る固形状の不要物
18	動物のふん尿	畜産農業の動物のふん尿
19	動物の死体	畜産農業の動物の死体
20	上記1から19の産業廃棄物を処理したものでそれらに該当しないもの	有害汚泥のコンクリート固形化物等

• 産業廃棄物は、安定型産業廃棄物、管理型産業廃棄物のほか、特別管理産業廃棄物に分けられます。
• 「安定型産業廃棄物」とは、有害物や有機物が付着しておらず雨水等にさらされても性状がほとんど変化しないもので、安定型最終処分場で埋立処分できます。5種類が指定されています。
• 「管理型産業廃棄物」とは、土中の微生物などにより分解し浸出液、ガスなどが発生するもので、管理型最終処分場等で埋立処分する必要があります。安定型産業廃棄物以外の15種類で、有害物質が基準を超えて含まれていないものです。
• 「特別管理産業廃棄物」とは、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性などで人の健康や生活環境に被害を生ずる恐れのある廃棄物です（2条）。

◇ 一般廃棄物、事業系一般廃棄物とは

• 「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物のことで（2条）、次のものです。
• 家庭で生じた廃棄物（家庭系一般廃棄物）
• 事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、産業廃棄物として指定されたもの以外の廃棄物（事業系一般廃棄物）
• 「特別管理一般廃棄物」とは、一般廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性などで人の健康や生活環境に被害を生ずる恐れのある廃棄物です（2条）。

◇ 事業者の責務

• 廃棄物に関する事業者の責務として、事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない（3条）とされています。
• 適正な処理とは、排出事業者が自ら処理するか、許可業者に委託して処理することを意味します。
• 特に産業廃棄物については、事業者は産業廃棄物を自ら処理しなければならない（11条）とし、産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、運搬は許可を受けた産業廃棄物収集運搬業者へ、処分は許可を受けた産業廃棄物処分業者にそれぞれ委託しなければならず、また、委託した産業廃棄物の処理状況を確認し、発生から最終処分終了までの一連の処理が適正に行われるよう努めなければならない（12条）と定められています。

〇 建設副産物と建設廃棄物

◇ 建設副産物

• 建設工事（解体工事を含む）に伴い副次的に発生するものを「建設副産物」といい、「建設廃棄物」のほか、そのまま資源とすることができる「建設発生土」と「有価物」があります。

◇ 建設廃棄物

• 建設廃棄物には、産業廃棄物（安定型産業廃棄物、管理型産業廃棄物、特別管理産業廃棄物）と事業系一般廃棄物があります。
• ★建設廃棄物のうち安定型産業廃棄物には次の5種類がありますが、廃容器包装（使用済の空き瓶・空き缶・ペットボトル・プラスチック容器など）や廃石膏ボードは除きます。
• がれき類（コンクリート・アスコン破片等）
• ガラス・陶磁器くず
• 廃プラスチック類（廃発泡スチロール等の梱包材、廃ビニール、合成繊維くず、合成ゴムくず等）
• 金属くず
• ゴムくず（天然ゴムくず）
• ★建設廃棄物のうち管理型産業廃棄物には主に次の5種類があります。
• 汚泥（建設汚泥）
• 廃油（廃潤滑油、廃切削油、廃溶剤類）
• 紙くず（包装材、段ボール、壁紙等）
• 木くず（型枠・足場材等、内装・建具工事等の残材、伐根・伐採材、木造解体材等）
• 繊維くず（天然繊維系のウエス・畳表等）
• 特別管理産業廃棄物とは、産業廃棄物のうち爆発性、毒性、感染性などで人の健康や生活環境に被害を生ずる恐れのある廃棄物のことで、処理方法に厳しい規制があります。建設現場では、廃油（揮発油・灯油・軽油類）、廃ＰＣＢ、飛散性アスベスト廃棄物などが該当します。
• 建設混合廃棄物とは、安定型産業廃棄物とそれ以外の廃棄物が分別されずに混在している廃棄物のことです。
• 産業廃棄物のうち、一定規模以上の現場においては、特定建設資材（コンクリート、コンクリート2次製品、木材、アスファルト混合物）は、建設リサイクル法において分別し再資源化することが義務付けられています。（建設リサイクル法の概要と遵守のポイント参照）
• 建設工事の事業系一般廃棄物としては、現場事務所などで発生する紙くず、段ボール、弁当がら、生ごみなどや、現場の伐開物（草、笹など）などがあります。
• 事業系一般廃棄物については、自治体の処理施設へ自ら搬入する場合以外は、一般廃棄物収集運搬許可業者に有償で収集を依頼することになります。

◇ 建設発生土

• 「建設発生土」（いわゆる「残土」）とは、建設工事から搬出される土砂であり、廃棄物処理法に規定する廃棄物になりませんが、「建設汚泥」や「廃棄物混じり土」は廃棄物となります。
• ★2021年7月に静岡県熱海市で残土から大規模な土石流が発生したことから、公共工事においては入契法適正化指針において「建設発生土の搬出先に関する情報」を明確化することや、民間工事でも民間標準約款を改正して建設発生土の搬出先指定について盛り込む方針としたことなど、残土の適正処理に向けて規制強化が進められています。

◇ 有価物

• スクラップなど、他人に有償で売却できるものは、「有価物」として廃棄物処理法に規定する廃棄物になりません。
• ただし、売却先に運賃を支払う場合で、売却益よりも運賃の方が多い場合は、一般に「逆有償」として有価物とは認められず廃棄物扱いとなりますので、十分な注意が必要です。
• 建築物内に残存する廃棄物（残存物）について、什器・備品など固定されていないものの排出事業者は元請業者ではなく、残存物の持主である発注者となります。工場等の機械設備などで、アンカーボルト等で建物に固着し建築設備の一部と見なせる場合は、残存物に該当しないとして、排出事業者は元請業者とできるとのことです。

〇 建設工事における産業廃棄物管理上の必要事項

• 建設工事においては、重層下請構造から、個々の廃棄物の排出者の特定が困難となる可能性や、処理責任が曖昧となる可能性があることから、注文者から直接建設工事を請け負った元請業者を排出事業者とすると定められています（21条の3）。
• 従って、建設工事で発生する産業廃棄物については、下請業者の産業廃棄物も含め、元請業者がその運搬・処分を許可業者等に処理委託する必要があります。排出者責任は元請業者にありますが、下請業者が直接他人に委託するなどの不適正な委託を行った場合は、下請業者も措置命令等の対象となります。
• 元請業者が処理委託するに当たっての主な留意点は次の通りです。
• 産業廃棄物の品目に応じた許可業者へ委託すること。このため、委託する処理業者の事業の範囲や許可証を確認する。
• 産業廃棄物を県外処理する場合は、処理先の自治体の条例などを確認し、事前協議などの必要な手続を行うこと。
• 産業廃棄物の排出前に、収集運搬業者、処分業者それぞれと書面により契約を締結すること（許可証の写しを添付する）。
• 産業廃棄物の搬出の都度（１回の積込みごとに）、必ず元請業者がマニフェスト伝票を交付・保管すること。
• 産業廃棄物は、工事現場から廃棄物処理施設へ直接搬出すること。やむを得ず自社の資材置き場等に一時的な保管をする場合は、産業廃棄物の保管基準が適用されます。
• 元請業者に返送されるマニフェストにより産業廃棄物の処理状況を確認すること（少なくとも、排出時に元請業者が保管しているＡ票と最終処分終了後に委託業者から送られてくるＥ票を照合する）。
• 産業廃棄物の収集運搬費、処分費は、元請業者から各委託先に直接支払うこと。
• 委託契約書とマニフェストを法定保存期間である5年間保存すること。（しかし、元請業者が適切に委託したとしても、例えば委託先が不法投棄をすれば、排出事業者である元請業者も責任を問われて、除去に必要な措置を命じられたり、場合によって排出事業者も行政処分により社名が公表されてしまうこともありえます。特に、”行政処分には時効がない”ことを考えると、マニフェストについては、実際には無期限に保管することが望ましいものと思われます。）
• 下請業者は排出事業者ではないため、原則として（自社発生物も含め）廃棄物を搬出することができませんが、例外も定められています（21条の3）。
• 産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ下請業者は、元請業者と委託契約を結ぶことで、当該下請業者の廃棄物を運搬・処分することができます。
• 元請業者の請負金額が500万円以下の小規模な修繕維持工事（新築・増築・解体を除く）では、許可を有しない下請業者も、一定の要件を全て満たす場合に限って、当該下請業者の廃棄物を運搬する例外が認められています。
• なお、これらの場合もマニュフェストの交付義務は元請業者にあります。

〇 行政指導・行政処分等

◇ 報告徴収、立入検査

• 都道府県知事等は、排出事業者、産業廃棄物処理業者、産業廃棄物処理施設の設置者などに対し、廃棄物の保管、収集・運搬、処分、施設の構造・維持管理に関し必要な報告を求めることができます（18条）。
• 都道府県知事等は、排出事業場、処理業者の事務所、廃棄物処理施設のある土地・建物に立ち入り検査をすることができます（19条）。

◇ 命令

• 都道府県知事等は、排出事業者、産業廃棄物処理業者などに対し、期限を定めて、産業廃棄物の保管、収集・運搬又は処分方法などの改善を命令する ことができます（19条の3）。
• 都道府県知事等は、不法投棄等が行われた場合、その行為者や委託者に対し、期限を定めて、除去等を命令することができます（19条の5）。

〇 刑罰

◇ 罰則の内容

• 罰則は、最も厳しいもので、5年以下の懲役又は1000万円以下の罰金となっており、排出事業者関係では、委託基準違反（産業廃棄物の運搬・処分を産業廃棄物収集運搬業者・処分業者以外の者に委託したときなど）や措置命令違反（生活環境保全上の支障の除去等のために出された措置命令に違反したとき）などが該当します（25条）。この他に、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金（26条）などの刑があります。

◇ 両罰規定

• 法人の代表者、使用人、従業員が、その法人の業務に関し刑罰を科されたときは、その法人に対しても最大で3億円の罰金刑が科されます（32条）。