建設リサイクル法の概要と遵守のポイント
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(通称「建設リサイクル法」)の概要と建設業者にとっての法令遵守のポイントについて説明します。
〇 建設リサイクル法の概要
◇ 建設リサイクル法の目的
建設リサイクル法の目的は、特定の建設資材の適正な分別解体処理と再資源化の促進を図ることです。このため、対象となる建設資材の範囲や工事の規模を指定したうえで、発注者や建設業者の責務を規定し、適正な処理や手続の方法、許認可権限者による監督権、罰則などが定められています。
◇ 条文参照
建設リサイクル法
(2016/08/01改正施行)
条項
内容
1条~2条
目的及び定義
3条~8条
基本方針の策定、建設業者や発注者や国・自治体の責務
9条~15条
分別解体の実施義務、発注者の届出、元請業者の発注者への書面説明、受注者への助言・勧告・命令
16条~20条
再資源化の実施義務、元請業者の発注者への報告、受注者への助言・勧告・命令
21条~37条
解体工事業の登録制度
38条~47条
雑則
(うち42条~43条)
建設工事の発注者・受注者に対する報告徴収、立入検査
48条~53条
罰則
〇 建設リサイクル法の対象範囲
◇ 特定建設資材及び同廃棄物
「特定建設資材」とは、建設リサイクル法において分別解体等の対象となる資材で、再資源化が資源の有効利用や廃棄物の減量を図る上で特に必要で、かつ再資源化に経済性の制約が著しくないものとして、次の4つの資材が指定されています(2条、令1条)。
コンクリート
コンクリート及び鉄から成る建設資材(PC版などコンクリート2次製品)
木材
アスファルト・コンクリート(アスファルト混合物)
「特定建設資材廃棄物」とは、特定建設資材が廃棄物となったもので(2条)、建設リサイクル法において再資源化等の対象となる次の3つの廃棄物です。
コンクリート塊
建設発生木材
アスファルト・コンクリート塊
◇ 対象建設工事
建設リサイクル法の対象建設工事は、特定建設資材を用いた建築物等の解体工事や特定建設資材を使用する建設工事で、次の基準以上の規模のものです(9条、令2条)。
建築物の解体工事で床面積が合計80m2以上
建築物の新築・増築工事で床面積が合計500m2以上
建築物の修繕・模様替等工事(リフォーム等)で税込請負代金が1億円以上
建築物以外の工作物の工事(土木工事等)で税込請負代金が500万円以上
〇 関係当事者の基本的な責務
◇ 建設工事の発注者(施主)の責務
建設工事の発注者(施主)は、分別解体等や建設資材廃棄物の再資源化等に要する費用の適正な負担や、再資源化された建設資材の使用等に努めなければならないとされています(6条)。
◇ 建設業者の責務
建設業者は、建設資材廃棄物の発生を抑制するとともに、分別解体や再資源化等に要する費用を低減し、また再資源化された建設資材を使用するよう努めなければならないとされています(5条)。
「対象建設工事」の受注者(下請負人を含む)は、正当な理由がある場合を除き、分別解体等をしなければなりません。また、分別解体等に当たって、特定建設資材廃棄物をその種類ごとに分別することを確保するための適切な施工方法に関する基準に従い、行わなければなりません。(9条)
〇 対象建設工事における手続の流れ
◇ 対象建設工事における建設リサイクル法による手続の流れは、次の通りとなります。
【①書面説明】
元請業者は、発注者(施主)に対し、解体する建築物等の構造、新築工事等で使用する特定建設資材の種類、工事着手の時期及び工程の概要、分別解体等の計画、解体する建築物等に用いられた建設資材の量の見込み等について、書面を交付して説明しなければなりません。なお、元請業者等の受注者は、その下請業者に対しても、同様の内容を告げなければなりません。(12条)
【②書面契約】
発注者(施主)と元請業者は、請負契約の書面締結に当たって、分別解体等の方法、解体工事及び再資源化等に要する費用、再資源化をするための施設の名称及び所在地を記載しなければなりません。なお、元請業者等の受注者は、その下請業者に対しても、請負契約の書面締結に当たって、同様の内容を記載しなければなりません。(13条)
【③事前届出】
発注者(施主)は、都道府県知事に対し、工事に着手する7日前までに、分別解体等の計画等を届け出なければなりません。届け出た内容を変更する場合も7日前までに届け出る必要があります。都道府県知事は、届出を受理した日から7日以内に限り、計画の変更などを命ずることができます。(10条)
【④分別解体】
受注者(元請業者及び下請業者)は、「分別解体等の施工方法に関する基準」に従い、特定建設資材の分別解体等をしなければなりません(9条、則2条)。
【⑤再資源化】
受注者(元請業者及び下請業者)は、分別解体等に伴って生じた特定建設資材廃棄物を再資源化しなければなりません。ただし、建設発生木材については、工事現場から50キロ以内に再資源化施設がない場合など、再資源化が困難な場合は、縮減(適正な施設での焼却等)を行うことで足ります。(16条、令4条)
【⑥書面報告】
元請業者は、特定建設資材廃棄物の再資源化等が完了したときは、その旨を発注者に書面で報告するとともに、再資源化等の実施状況に関する記録を作成・保存しなければなりません(18条)。
〇 行政指導・行政処分等
◇ 報告徴収、立入検査
都道府県知事は、対象建設工事について、発注者や受注者に対し特定建設資材に係る分別解体等の実施状況に関し報告をさせることができ、また、受注者に対し特定建設資材廃棄物の再資源化等の実施状況に関し報告をさせることができます(42条)。
都道府県知事は、対象建設工事の現場や受注者の営業所等に立ち入り、帳簿、書類等を検査することができます(43条)。
◇ 助言・勧告、命令
都道府県知事は、対象建設工事の受注者に対し、分別解体等の実施や特定建設資材廃棄物の再資源化等の実施に関し、助言又は勧告をすることができます(14条、19条)。
都道府県知事は、対象建設工事について、受注者が正当な理由がなく、分別解体等や再資源化等の適正な実施に必要な行為をしない場合、受注者に対し分別解体等の方法や再資源化等の方法の変更などを命じることができます(15条、20条)。
〇 刑罰
◇ 罰則の内容
罰則は、(解体工事業の許可や営業に関するものを除き)最も厳しいもので50万円以下の罰金となっており、都道県知事による分別解体方法や再資源化方法の変更命令に従わないときなどが該当します(49条)。この他、発注者の事前届出に関して、届出をしなかったり虚偽の届出をした場合や、届け出た計画に対する変更命令に従わなかった場合などの罰金刑があります(50~51条)。
◇ 両罰規定
法人の代表者、使用人、従業員が、その法人の業務に関し刑罰を科されたときは、その法人に対しても罰金刑が科されます(52条)。