建設業法の概要と遵守のポイント

〇 建設業法の概要

◇ 建設業法の目的

• 建設業法の目的は、建設工事の適正な施工の確保と発注者の保護とされており、このために、建設業の許可制度、請負契約の適正化、技術者制度、許認可権限者による監督処分などが定められています。建設業者、特に元請業者や特定建設業者に対する規制を中心とし、加えて、発注者の義務や下請業者の保護に関する規定なども設けられています。

◇ 条文参照

• 建設業法（◆2020/10/01改正施行）
• 2020年10月1日付で施行された「新・担い⼿３法改正」（建設業の担い⼿の中⻑期的な育成・確保のため、建設業法・⼊契法・品確法を⼀体として改正したもの）のうち、建設業法の主な改正部分に◆印を付しています。

条項	内容
1条～2条	目的及び定義
3条～17条	建設業の許可
18条～24条	請負契約とそれに伴う注文者及び受注者の義務
24条の2～7	下請契約に関する元請負人の義務
25条～25条の26	請負契約に関する紛争の処理
25条の27～26条の3	主任技術者及び監理技術者の配置
26条の4～26条の21、27条の18～27条の22	監理技術者講習及び登録講習実施機関
27条～27条の17	施工管理技士の技術検定及び指定試験機関
27条の23～27条の36	経営事項審査及び登録経営状況分析機関
27条の37～27条の39、34条～39条の3	建設業団体、中央建設業審議会等
28条～32条	建設業者に対する監督（指示、営業停止、許可取消）
39条の4～44条の5	雑則（標識の掲示、帳簿の備付、公正取引委員会や中小企業庁との連携等）
45条～55条	罰則

• 建設業法施行令（◆2020/10/01改正施行、★2023/01/01改正施行）
• 2023年1月1日付で改正施行される「建設業法施行令の一部を改正する政令」（特定建設業の許可、監理技術者の配置、施工体制台帳の作成を要する下請代金額や、主任技術者・監理技術者の専任を要する請負代金額などについて見直しを行うもの）の主な改正部分に★印を付しています。

条項	内容
1条	許可営業所の定義
1条の2	建設業許可が不要な軽微な建設工事
2条	★特定建設業の許可が必要な下請金額の下限、★監理技術者の配置が必要な下請金額の下限
3条	使用人の定義
5条の2	指定建設業となる建設工事の種類
6条	建設工事の見積期間
6条の3	一括下請負の禁止の対象となる建設工事
7条の2	特定建設業者の下請代金支払期日に関する特例の対象とならない下請負人の資本金
7条の4	★施工体制台帳及び施工体系図の作成が必要な下請金額の下限
27条	★専任の主任技術者又は監理技術者を必要とする請負代金の下限
30条	★特定専門工事の対象となる建設工事の種類と請負代金の上限

〇 定義

• 建設業法は規制の多い法律です。どのような作業が建設業法上の「建設工事」とされるのか、即ち「建設工事」の定義について、最初に考えてみたいと思います。

◇ 工事とは

• まず「工事」について、建設業法に定義はありませんが、辞書には「土木・建築などの作業」（広辞苑）などとあります。
• 「建築」については建築基準法に定義があり、「建築物」について「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの、これに附属する門もしくは塀」などと定義したうえで、「建築」について「建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することをいう」としています（建築基準法2条）。
• 「土木」について、辞書には「土石・木材・鉄材などを使って、道路・鉄道・河川・橋梁きょうりょう・港湾などを造る建設工事」（デジタル大辞泉）などとありますが、一般に「土木」は「建築以外の工事全般」という概念で捉えられており、建築物以外の土地に定着する工作物（＝土木構造物）を造る作業と言えそうです。
• これらのことから、「工事」とは、「土地に定着する工作物（＝土木構造物や建築物）を造る作業」と定義できるかと考えます。

◇ 建設工事とは

• 「建設工事」について、建設業法では「土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものをいう」と定めています（2条）。これは建設業許可の業種（2つの一式工事と27の専門工事）を並べて掲示しており、「工事」の種類を事実上網羅しているものと考えられますが、建設工事の一般的な定義としては分かりづらいものがあります。
• 「建設業」について、建設業法では「建設工事の完成を請け負う営業」と定義されています（2条）。「建設工事」は、民法（債権法）に定める13種類の典型契約のうち、「請負」の形式で契約されたものとなります。
• これらのことから、「建設工事」の定義としては、「土木構造物や建築物を造る作業（＝「工事」）で、なおかつその完成を請け負っているもの」とするのが、より分かりやすいかと考えます。新築工事は無論のこと、増築・改築・修繕・模様替・解体も含まれます。
• 一方で、建設工事や建設物に関する業務でも、その業務自体が工事ではないものや、特に完成を請け負っているわけではないものは、建設業法上の「建設工事」とはなりません。例示すると、企画業務、調査業務、設計業務、設計監理業務、ＰＭ業務、ＣＭ業務、運搬業務、警備業務、物品販売業務、保守・点検業務、維持・管理業務のようなものが挙げられます。
• なお、実際の取引においては、1つの契約文書で2種類以上の典型契約の内容が混合記載されている「混合契約」も少なくなく、例えば契約の主たる内容が機器や家具・什器などの「売買契約」で、契約書の名義も「売買契約書」になっていたとしても、契約内容に当該機器などを建物に定着させて据え付ける工事の完成を約した「請負契約」が混合していれば、建設業法上はその契約は「建設工事請負契約」とみなされ、建設業法が適用されることに留意が必要です（建設業法24条）。
• 機器や家具・什器などの据付工事に関して、通常はサービスで取り付けるものや、取付が簡単で特別の技術を要しないものまで、その全てを「建設工事」とし建設業法が適用されるというのは現実的ではありません。それを売買業務の一環とみなすのか、あるいは建設工事とするのか、一定の線引きはあるものと考えます。
• しかし、建設工事とされる内容であれば、建設業法上の様々な規制を受けるほか、特に元請業者の場合は、労働安全衛生法、廃棄物処理法、建設リサイクル法などへの対応も必要となってきます。

◇ 発注者とは、注文者とは

• 建設業法において、「発注者」と「注文者」は意味が異なります。「発注者」については「建設工事（他の者から請け負ったたものを除く）の注文者」（2条）と定めています。即ち、元請業者への注文者（建築基準法上の「建築主」や、いわゆる「施主」）のことになります。
• 「注文者」については建設工事を注文する者という位置付けにしており、発注者や元請業者は当然注文者となりますが、下請業者も再下請先に注文する限りにおいては注文者です。

◇ 元請業者とは、元請負人とは

• 建設業法に「元請業者」という定義はありませんが、本ページでは発注者から直接建設工事を請け負った建設業者としています。
• 「元請負人」について、建設業法では「下請契約における注文者で建設業者であるもの」（2条）と定めています。即ち、元請業者は当然「元請負人」ですが、下請業者でも下請工事の一部を他の建設業者に再下請負させる限りにおいては「元請負人」となります。

◇ 下請業者とは、下請負人とは

• 建設業法に「下請業者」という定義はありませんが、本ページでは元請業者以外の建設業者としています。元請業者から見た発注階層に応じた呼称である「1次下請」「2次下請」「3次下請」…などを全て含むものです。
• 「下請負人」について、建設業法では「下請契約における請負人」（2条）と定めています。

◇ 請負代金における消費税の考え方

• 建設業法で各種規制を設ける際に、元請契約の請負代金や下請契約の請負代金総額を基準とする場合がありますが、この金額に消費税が含まれるかどうかについて、建設業許可事務ガイドライン(Ｐ44)では「法、令及び規則の規定中、『請負代金の額』その他の個々の取引に係る請負代金に係る用語は、当該取引に係る消費税及び地方消費税の額を含むものとする」（国土交通省（ガイドライン）参照）とされており、本ページでは分かりやすく金額の前に「税込」を冠して記述しておくことにしています。

〇 建設業許可制度

◇ 許可営業所

• 建設業法上の営業所とは、本店または支店もしくは常時建設工事の請負契約を締結（見積、入札から契約締結までの一連の行為を含む）する事務所と定義されています（3条、令1条）。建設業許可に関して営業所の届け出が必要となるので、一般に「許可営業所」と呼ばれています。
• 営業所と呼称しても、常時建設工事の請負契約を締結する事務所でなければ、「許可営業所」として届け出る必要はありません。
• 一方で、本店や支店は、常時建設工事の請負契約を締結していれば「許可営業所」に該当し、そうでない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行うなど建設業に係る営業に実質的に関与している場合は「許可営業所」に該当します（建設業許可事務ガイドライン）。
• 支店及び「許可営業所」の代表者（支店長や営業所長）は、建設業法上「使用人」となり（令3条）、一般に「令3条の使用人」と呼ばれます。「令3条の使用人」は、建設業許可（更新）に際して、欠格要件に該当しないこと（6条）の他、建設工事の請負契約の締結やその履行に当たって一定の権限を有すると判断されること（会社の代表者から一定の権限を委任されているなど）や、当該営業所に常勤性がある（当該営業所において毎日所定の時間中、その職務に従事している）ことが求められます（建設業許可事務ガイドライン）。なお、使用人が禁固刑以上の刑に処せられ、又は建設業法などで罰金刑に処せられた場合は、欠格要件として建設業許可の取り消しの対象となります（29条）。
• 許可営業所の扱いを受けると、許可を受ける建設業の業種ごとに（工事に従事しない）専任の技術者の配置が必要（7条）、契約などに関する帳簿の備え付けが必要（31条）、などの義務が発生します。

◇ 大臣許可と知事許可

• 2以上の都道府県で「許可営業所」（許可営業所たる本店や支店を含む）を設ける場合は大臣許可に、1の都道府県だけに「許可営業所」を設ける場合は知事許可になります（3条）。知事許可でも全国で営業することは問題ありません。
• 軽微な建設工事（工事1件の税込請負代金が500万円未満（建築一式工事では同1,500万円未満または延面積150m2未満の木造住宅工事））のみを請け負う場合は許可は不要とされています（3条、令1条の2）。ただし、会社のいずれかの許可営業所で許可を受けた業種については、軽微な建設工事のみを請け負う場合であっても、届出をしている営業所以外においては当該業種について営業することはできません（建設業許可事務ガイドライン）。

◇ 特定建設業と一般建設業

• 元請業者として1件の工事において発注する下請契約の税込総額が4,000万円（★⇒2023/01/01改正施行により4,500万円）（建築一式工事の場合は同6,000万円（★⇒2023/01/01改正施行により7,000万円））以上となる場合は、当該工事に関する業種について特定建設業の許可が必要となります（3条、令2条）。逆に言えば、下請工事しか行わない業種については、特定建設業の許可は必要ないことになります。1つの建設業者が、ある業種で特定建設業の許可を、他の業種で一般建設業の許可を受けることはできますが、同一の業種で特定建設業の許可と一般建設業の許可を同時に受けることをできません（3条、建設業許可事務ガイドライン）。
• 特定建設業の制度は、下請保護を目的に作られており、一般建設業に比べ、許可要件も、許可を受けた後の規制も格段に厳しくなります。

◇ 経営管理責任者

• 建設業許可を受けるには、経営安定性、技術力及び適格性において、様々な要件がありますが、経営安定性の要件として、許可を受けようとする建設業に関し5年以上の経営管理責任者としての経験を有する者が常勤取締役にいること（7条）は留意すべき点です。経営業務の管理責任者が退職し、後任が不在となった場合は要件欠如で許可の取消しとなるため、取締役人事においては誰を経営管理責任者にするのか、またもし経営管理責任者に急な欠員が生じた場合はどうするのか、その経歴も含めあらかじめ人選しておくことが必要となるからです。
• ◆なお、法改正により、経営管理責任者の要件として、これまでと同じ①建設業の取締役経験5年以上の場合に加え、②建設業の取締役経験2年以上、かつ取締役と取締役に次ぐ地位（執行役員等）の経験を合わせ5年以上、かつ当該取締役を補佐する者の配置、③建設業以外も含め取締役経験5年以上、かつ建設業の取締役経験2年以上、かつ当該取締役を補佐する者の配置、の②か③のいずれかでも良いこととなりました（2020/10/01改正施行7条、則7条）。

◇ 財産的基礎要件

• 同じく経営安定性の要件として「財産的基礎要件」があり（7条、15条）、特に特定建設業では①欠損額が資本金の20%を超えていない②流動比率が75%以上③資本金が2,000万円以上④自己資本が4,000万円以上の全てを満たしている必要があります（建設業許可事務ガイドライン）。決算ごとに、財務諸表でこれら条件がクリアしていることを確認することが重要ですが、特に5年毎の許可更新時に、直近の財務諸表によって審査される点には十分留意が必要です。

◇ 許可業種と専任技術者

• 建設業の許可は、29の建設工事の種類（業種）ごとに受ける必要があります（3条、別表第一）。29の業種は、2つの一式工事と、27の専門工事に大別されます。
• 建設業許可を受けるには、「許可営業所」ごとに許可を受けようとする業種に係る一定の資格（2級施工管理技士、2級建築士など以上の資格）または経験を有する専任の技術者がいることが要件となります（7条）。特定建設業の場合は、専任の技術者に必要な資格（1級施工管理技士、技術士、1級建築士など）または経験の要件がより厳しくなり、特に、許可を受けようとする業種が指定建設業（土木一式、建築一式、電気、管、鋼構造物、舗装、造園の7種）である場合は、専任の技術者は1級施工管理技士、技術士、1級建築士等の有資格者に限られます（15条）。
• 専任技術者は 「営業所に常勤して専らその職務に従事することを要する者」とされ、専任性が認められる場合には出向社員であっても専任の技術者として取り扱うとされています（建設業許可事務ガイドライン）。専任性が求められるため、一定の場合（当該営業所で契約締結された工事で、当該工事が技術者の専任を要さず、工事現場と営業所が近接し常時連絡をとりうる場合（監理技術者制度運用マニュアル））を除き、現場の監理技術者や主任技術者を兼務できないこととなっているため、1つの許可業種につき、営業所の専任技術者以外に、必要な資格や経験を有する現場の技術者もいないと、当該許可業種の建設工事を請け負えないことになります。また、許可を取得した後に専任技術者が不在となった場合は許可の取消しの対象になる（29条）ので、許可営業所の人事異動では、誰を営業所の専任技術者にするかを常に考える必要があります。
• 29業種を特定建設業の許可に必要な営業所の専任技術者の資格で分類すると次の通りです。同一営業所であれば、1人の有資格者が、その資格によって許可を受けることが可能な複数の業種の専任技術者となることができます。
• なお、必要な建設業許可を受けるために最低限必要な資格が分かりやすいよう、1級施工管理技士か技術士のどちらかの資格があれば良い場合は1級施工管理技士のみを掲載しています。

専任技術者の資格	許可を受けることが可能な業種
【 土木系 】
・1級土木施工管理技士	土木一式、とび・土工、石、鋼構造物、舗装、しゅんせつ、塗装、水道施設、解体
・1級建設機械施工管理技士	土木一式、とび・土工、舗装
・1級造園施工管理技士	造園
・技術士（上下水道）	さく井、（管、水道施設）
【 建築系 】
・1級建築施工管理技士	建築一式、大工、左官、とび・土工、石、屋根、タイル・レンガ・ブロック、鋼構造物、鉄筋、板金、ガラス、塗装、防水、内装仕上、熱絶縁、建具、解体
・1級建築士	建築一式、大工、屋根、タイル・レンガ・ブロック、鋼構造物、内装仕上
【 設備系 】
・1級電気工事施工管理技士	電気
・1級管工事施工管理技士	管
・1級電気通信工事施工管理技士	電気通信　※2019年度に新設
・技術士（機械）	機械器具設置
・技術士（衛生工学）	清掃施設、（管、水道施設）
・甲（乙）種消防設備士	消防施設　※所定の実務経験も必要

• このうち2つの一式工事（土木一式、建築一式）は他とは異なり「総合的な企画・指導・調整のもとに土木工作物（建築物）を建設する工事」と定義され（建設業許可事務ガイドラインにおける「建設工事の内容、例示、区分の考え方一覧」）、一般に比較的大規模の土木（建築）工事を元請業者の立場で請け負う場合に必要な許可です。下請業者の立場で専門工事業者として請け負う場合は、一式工事の許可ではできず、請け負う建設工事の業種に応じたそれぞれ専門業種（27業種）の許可が必要とされています。
• なお、許可を受けた業種の工事を請け負う場合、当該工事に附帯する「他の業種」の工事を許可を受けることなく請け負うことができます（4条）。この場合、専門工事を自ら施工するときは（税込500万円未満の軽微な工事を除き）当該専門工事の主任技術者の資格を持っている者（専門技術者）を配置しなければなりませんが、一般的には下請業者に外注することが多いと思われ、その場合は、当該専門工事に係る建設業の許可を受けた下請業者に外注し、当該専門工事の主任技術者の資格を持っている者を配置してもらう必要があります（26条の2）。

◇ 許可の更新、その他の届出

• 建設業許可の有効期間は5年間であるため、5年毎に許可の更新を受けなければなりません（3条）。この他、会社の資本金、取締役等の役員、経営管理責任者、許可営業所の名称・所在地や専任技術者などに変更があった場合は30日以内に変更届を提出しなければならず、また、毎事業年度終了後4ヶ月以内に「事業年度終了届(決算変更届)」の提出も必要です（11条）。

◇ 経営事項審査

• 経営事項審査は、公共工事を元請業者として請け負おうとする建設業者が、あらかじめ必ず受けなければならない審査です（27条の23）。建設業許可手続の一環として事業年度終了届(決算変更届)を毎事業年度終了後4ヶ月以内に提出しなければなりません（11条）が、その後、経営状況分析機関に経営状況分析（経営状況を会計的な観点から点数化するもの）を依頼し、その結果通知書を添付して、建設業許可を受けた国又は都道府県に対し、経営規模等評価申請書を提出して審査を受け、その結果通知書を受領します。この一連の経営事項審査を毎年度受けていないと、公共工事の発注者に対し入札参加資格審査申請ができないため、結果的に入札にも参加できないことになります。

◇ 標識の設置

• 建設業者は、許可営業所及び建設工事の現場ごとに、公衆の見易い場所に、建設業許可に関する事項を記載した標識（「建設業の許可票」）を掲げなければなりません（40条、則25条）。更に建設工事の元請業者は、「労災保険関係成立票」の掲示義務もあるので、建設現場において2つの標識を並べて掲示することが一般的です。
• ◆建設工事の現場では、元請業者はもとより、下請業者も許可票を掲示するとされていましたが、法改正により元請業者だけの義務となりました（2020/10/01改正施行40条）。

◇ 帳簿の備付

• 建設業者は、営業所ごとに、請負契約や下請契約などに関する所定の事項を記載した帳簿やその添付書類（契約書や施工体制台帳など）を備え、5年間（住宅新築工事で10年間、また元請業者の場合は完成図、発注者との打合記録、施工体系図を10年間）保存しなければなりません（40条の3、則26条）。

◇ 建設業許可の承継・相続の特例

• ◆建設業者が事業譲渡・合併・分割を⾏った場合、譲渡等を受けた会社は新たに建設業許可を取り直す必要があったため、新しい許可が下りるまで空⽩期間が⽣じ不利益が⽣じていましたが、法改正により事前の認可を受けることで、建設業許可を承継することが可能となりました。個人事業主である建設業者が死亡した場合に、その相続⼈が引き続き建設業を営もうとするときに、30⽇以内に申請して認可を受けた場合も同様です。（2020/10/01改正施行17条の2～3）

◇ 建設業許可事務ガイドライン

• 建設業許可手続については、「建設業許可事務ガイドライン」に詳しく記述されています。（国土交通省（ガイドライン）を参照）

〇 建設工事の見積と請負契約

◇ 建設工事請負契約の原則

• 建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならないと定められています（18条）。元請負人が下請負人に一方的に義務を課すものや、下請負人に過大な負担を課す内容など、建設工事標準下請契約約款に比べて片務的な内容による契約については、結果として建設業法第19条の3により禁止される不当に低い請負代金につながる可能性が高い契約となるので、適当ではないとされています（建設業法令遵守ガイドライン）。
• 契約書に「業務委託契約」などどんな名称を使っても、契約内容が建設工事の完成を目的とする有償契約であれは「建設工事請負契約」とみなし、建設業法が適用されます（24条）。

◇ 注文者（発注者、建設業者）の義務

• 注文者は、見積条件（書面契約で記載すべき事項のうち請負代金を除いた事項）についてできる限り具体的な内容を提示し、かつ、条件提示から入札（随契では契約締結）までに見積に必要な一定の期間を設ける必要があります（20条）。
• 見積に必要な一定の期間とは、工事１件の予定価格が5,000万円以上は15日以上（やむを得ない場合は10日以上）、500万円以上5,000万円未満は10日以上（やむを得ない場合は5日以上）、500万円未満は1日以上です（令6条）。なお、この日数には、条件提示日と入札（随契では契約締結）日は含まれません（建設業法令遵守ガイドライン）。
• ◆また、法改正により、注文者は、地盤沈下や地下埋設物による土壌汚染が発生する恐れがある、騒音・振動等による周辺環境への配慮が必要となるなど、工期又は請負代金に影響を及ぼすものがあると認めるときは、契約締結までに、その旨と状況把握に必要な情報提供が義務付けられました（2020/10/01改正施行20条の2）。
• 注文者は、取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金とする契約を締結してはいけません（19条の3）。変更契約においても同様です（建設業法令遵守ガイドライン）。
• 注文者は、請負契約の締結後、取引上の地位を不当に利用して、見積条件として提示していなかった資機材の購入先を指定して購入を強制することで、請け負った建設業者に損害を与えてはいけません（19条の4）。
• ◆法改正により、注文者は、⼯事を施⼯するために通常必要と認められる期間に⽐して著しく短い⼯期とする契約を締結してはいけないと明記されました（2020/10/01改正施行19条の5）。変更契約においても同様です（建設業法令遵守ガイドライン）。
• 著しく短い⼯期であるかどうかについては、休⽇や⾬天による不稼働⽇など中央建設業審議会において作成した⼯期に関する基準で⽰した事項が考慮されているかどうかの確認、過去の同種類似⼯事の実績との⽐較、下請負人が見積書で示した工期との比較などを総合的に勘案したうえで、個別に判断されることになるとのことです（建設業法令遵守ガイドライン）。（⼯期に関する基準については、国土交通省（工期基準）を参照）

◇ 建設業者の義務

• 建設業者は、契約締結に際し、工事内容に応じ、工事の種別ごとの材料費・労務費・その他経費の内訳、◆工事の工程ごとの作業とその準備に必要な日数を明らかにして見積を行うよう努めなければなりません（2020/10/01改正施行20条）。法改正により、工期の適正化のため、請負業者も⼯程の細⽬を明らかにするよう求められています。
• 建設業者は、注文者から請求があったときは、契約成立前に見積書を交付しなければなりません（20条）。

◇ 書面契約の義務

• 建設工事請負契約の当事者は、次の事項を記載した書面にて契約をしなければなりません（19条）。発注者・元請業者間、元請業者・1次下請業者間、1次下請業者・2次下請業者間、…、の全ての段階でも書面契約が必要です。一切の制約条件なしで書面契約が義務化されている点では、建築士法や下請法に比べ、徹底した規制になっています。書面契約の締結時期については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として工事の着工前に行わなければならないとされています（建設業法令遵守ガイドライン）。
• 工事内容
• 請負代金
• 工期
• ◆⼯事を施⼯しない⽇⼜は時間帯の定め（2020/10/01改正施行）
• 支払条件（工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法、前金払や出来形部分払の定めをするときはその支払の時期及び方法）
• 設計変更や工事中止などの場合における工期変更、請負代金変更及び損害負担方法
• 天災不可抗力の場合における工期変更及び損害負担方法
• 価格変動の場合における請負代金変更及び工事内容変更
• 第三者損害の場合における賠償金負担方法
• 注文者からの支給材・貸与品の内容・方法
• 完成検査の時期・方法及び引渡し時期
• 契約不適合責任に関する定め
• 履行遅滞など債務不履行における遅延利息、違約金等の損害金
• 契約に関する紛争解決方法
• 上記事項を追加・変更するときも、追加・変更内容を書面にて契約しなければなりません（19条）。追加・変更に関する書面契約の締結時期についても、追加・変更工事の着手前に行わなければならないとされています（建設業法令遵守ガイドライン）。
• 建設リサイクル法の対象となる建設工事の請負契約締結に当たっては、解体工事に要する費用や再資源化等に要する費用を明記することを義務付けています（建設リサイクル法の概要と遵守のポイント参照）。

〇 技術者制度

◇ 技術検定制度と施工管理技士資格

• 国土交通省は、施工技術の向上を図るため、建設工事に従事する者を対象に、技術検定制度を設けています（27条）。この技術検定制度による資格を取得することで、建設業法で定める許可営業所の専任技術者や建設工事の施工に必要な技術者となることができます。
• 検定種目には、建設機械施工技士、土木施工管理技士、建築施工管理技士、電気工事施工管理技士、管工事施工管理技士、電気通信工事施工管理技士、造園施工管理技士の7つがあり、それぞれ1級及び2級に区分して行われます。このうち、2級土木施工管理技士及び2級建築施工管理技士などでは、更に種別に細分して検定が行われます（令27条の3）。
• 現行の検定では、まず学科試験を受け、その合格者が更に実地試験を受け、その合格者に「技士」の称号が与えられてきましたが、◆法改正により、2021年度の検定からは、まず第1次検定を受け、その合格者に「技士補」の称号が与えられ、「技士補」が更に第2次検定を受け、その合格者に「技士」の称号が与えられるようになります（2021/04/01改正施行27条、令40条）。⇒（例）１級土木施工管理技士補（1級の第一次検定に合格した者）

◇ 主任技術者と監理技術者

• 建設業者は、元請業者か下請業者か、金額の大小に関係なく、全ての工事現場に必ず「主任技術者」を配置しなければなりません。建設業者が元請業者の場合で、請け負った工事1件の下請契約の税込総額が4,000万円以上（★⇒2023/01/01改正施行により4,500万円）（建築一式工事の場合は同6,000万円（★⇒2023/01/01改正施行により7,000万円））以上となる場合は、「主任技術者」に代え「監理技術者」を配置しなければなりません。（26条、令2条）
• ◆しかし法改正により、注文者（元請業者、1次下請業者など）は、特定専⾨⼯事（下請代金の合計額が税込3,500万円（★⇒2023/01/01改正施行により4,000万円）未満の鉄筋工事及び型枠工事）については、下請業者の主任技術者の配置を省略できることになりました。ただ、注文者の主任技術者の要件として当該特定専⾨⼯事と同⼀種類の建設⼯事に関し1年以上指導監督的な実務経験等が必要、関係者が合意のうえ発注者の書面承諾も必要、主任技術者の配置を省略する下請業者は他の建設業者に再下請できないなど制約も多いので、十分な留意が必要です。（2020/10/01改正施行26条の3、令30条）
• 主任技術者に必要な資格や経験は、一般建設業許可における専任技術者に必要な資格や経験と同じです。また、監理技術者に必要な資格や経験は、特定建設業許可における専任技術者に必要な資格や経験と同じで、特に指定建設業である場合は、1級施工管理技士、技術士、1級建築士等の有資格者に限られる点も同じです。（26条）
• 監理技術者は、監理技術者に必要な資格や経験を有することに加え、その申請により監理技術者資格者証（有効期間5年）の交付を受け、かつ、監理技術者講習を修了し監理技術者講習修了証（有効期間5年）の交付も受けていることが必要となります。工事現場においては監理技術者証の携帯が義務づけられ、発注者の請求があったときは提示しなければなりません（26条）。
• 主任技術者と監理技術者は、工事を請け負った会社と直接的かつ恒常的な雇用関係が必要です。従って、直接の雇用関係がない派遣労働者や他社からの出向者、またその工事のために臨時に雇用された者（3ヶ月以上前から雇用関係のない者）もこのような技術者になることができません。

◇ 主任技術者・監理技術者の専任

• 請け負った工事が「公共性のある工作物」（民間工事も含め、個人住宅を除くほとんどの工事）で、1件の請負代金額が税込3,500万円（★⇒2023/01/01改正施行により4,000万円）（建築一式の場合は同7,000万円（★⇒2023/01/01改正施行により8,000万円））以上の場合、主任技術者や監理技術者はその工事に専任でなければなりません。◆ただし、監理技術者については、監理技術者の職務を補佐する者として１級の技⼠補で主任技術者の資格を持つ者を専任で置いた場合には、当⾯2現場までは、監理技術者の兼務が可能となりました（2020/10/01改正施行26条、令27条）。
• 「専任」とは、他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事することとされています（監理技術者制度運用マニュアル）。必ずしも「専任」＝「常駐」ではありませんが、ある工事の専任の技術者は、その契約期間中（施工に着手するまでの期間は除外されます）は、他の工事の元請業者の監理技術者や主任技術者としてはもとより、下請業者の主任技術者としても従事できない点は十分に留意する必要があります。

◇ 一式工事における専門工事の技術者配置

• 元請業者として土木一式又は建築一式の許可で施工する場合、当該工事に含まれる一式工事以外の専門工事について、元請業者が当該専門工事の建設業許可を受けていることは必ずしも必要ありません。この場合、専門工事を自ら施工するときは（税込500万円未満の軽微な工事を除き）当該専門工事の主任技術者の資格を持っている者（専門技術者）を配置しなければなりませんが、一般的には下請業者に外注することが多いと思われ、その場合は、当該専門工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に外注し、当該専門工事の主任技術者の資格を持っている者を配置してもらう必要があります。（26条の2）

〇 一括下請負の禁止

◇ 一括下請負とは

• 一括下請負とは、建設業者が、請け負った工事について、下請業者に対し次のように請け負わせることです。ただし、施工に実質的に関与していると認められる場合を除きます。
• 請け負った工事の全部又は主要部分を一括して下請業者に請け負わせること。
• 請け負った工事の一部分でも、独立して機能を発揮する部分を一括して下請業者に請け負わせること（ex新築工事を2棟請け負い、そのうち1棟を一括して下請業者に請け負わせることなど）。

◇ 一括下請負の禁止

• 一括下請負は、発注者の信頼を裏切るとともに、中間搾取、工事の質の低下、労働条件の悪化、責任の不明確化等を招く行為として、建設業法で禁止されています（22条）。
• 一括下請負をさせることも、一括下請負をすることも、共に禁止されています。
• 元請業者と1次下請業者間はもちろん、1次と2次、2次と3次といった下請業者間でも禁止されています。少額の工事でも禁止されています。

◇ 実質的関与

• 工事の全部を一括して下請業者に請け負わせるなどをしても、請け負わせた建設業者が当該工事に実質的に関与をしていれば一括下請負となりません。
• 実質的に関与していると認められるには、主任技術者を置いていること（金額によって専任していること）、自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等を行っていることなどが条件となりますが、2016年に元請業者・下請業者に分けて基準が明確化されました（国土交通省（一括下請判断基準）を参照）。

◇ 一括下請負禁止の例外

• 公共工事においては、一括下請負は全面的に禁止されています（入契法14条）。
• 民間工事であれば、マンション新築工事を除き、発注者の書面による事前承諾があれば一括下請負が可能です（22条、令6条の3）が、それでも主任技術者の配置は必要とされています。
• なお、書面承諾をもらう「発注者」とは、建設業法上、元請業者への注文者のことであり（2条）、従って、例えば1次下請業者が一括して2次下請業者に請け負わせるときは、元請業者からだけでなく、元請業者がその注文者からも書面承諾してもらう必要があります。

〇 施工体制台帳・施工体系図

◇ 施工体制台帳

• 施工体制台帳とは、下請負の実態を明らかにするため、工事現場ごとに、1次下請業者、2次下請業者など工事施工を請け負う全ての業者名、各業者の施工範囲、各業者の技術者氏名等を記載した台帳のことです。下請契約に該当しない資材納入、調査業務、運搬業務、警備業務などの契約は含まれません。

◇ 施工体系図

• 施工体系図は、施工体制台帳に基づいて、元請業者から1次下請業者、1次下請業者から2次下請業者といった注文の流れ（重層下請における位置関係）や各下請業者が担当する工事の範囲などが一目で分かるようにした図のことです。施工体系図を見ることによって、工事に携わる関係者全員が、工事全体の施工分担関係や、所属会社の契約関係を容易に把握することができます。

◇ 再下請負通知書

• 下請業者が、請け負った工事の一部を更に下請に請け負わせた場合、元請業者に対し提出する再下請負契約に関する通知書のことです。元請業者は、下請業者から提出された「再下請通知書」等に基づき施工体制台帳や施工体系図を作成します。

◇ 施工体制台帳や施工体系図の作成義務

• 次の場合に元請業者に作成義務がありますが、下請業者も請け負った工事の一部を更に下請に請け負わせた場合は「再下請負通知書」を元請業者に提出する義務があります（24条の7、令7条の4）。
• 民間工事では、元請業者が特定建設業者の場合で、請け負った工事1件における下請契約の税込総額が4,000万円（★⇒2023/01/01改正施行により4,500万円）（建築一式工事の場合は同6,000万円（★⇒2023/01/01改正施行により7,000万円））となった時点で作成義務があります。
• 公共工事では、全ての工事において元請業者に作成義務があります（入契法15条）。

◇ 施工体制台帳や施工体系図の作成・備置き・提示・閲覧義務

• 備置：施工体制台帳は、工事中の期間、工事現場ごとに作成し備え置くことが義務付けられています（24条の8）。
• 掲示：施工体系図は、工事中の期間、民間工事では工事関係者が見やすい場所に掲示しなければならず（24条の8）、公共工事では更に公衆が見やすい場所に掲示しなければなりません（入契法15条）。
• 閲覧：施工体制台帳は、民間工事では発注者から請求があったときは当該発注者に閲覧させなければならず（24条の7）、公共工事ではその写しを発注者へ提出しなければなりません（入契法15条）。

〇 建設業者の下請負人に対する支払に関する義務

◇ 元請負人（元請業者の場合に限らない）の下請負人に対する支払に関する義務

• 元請負人は、注文者から出来高払や竣工払を受けたときは、その対象となった工事を施工した下請負人に対して、相応する下請代金を1ヵ月以内のできるだけ早い日に支払わなければならず、◆そのうち労務費に相当する部分は現金で支払うよう配慮をしなければなりません（2020/10/01改正施行24条の3）。また、元請負人が注文者から前払金の支払を受けたときは、下請負人に対して、建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければなりません（24条の3）。
• 元請負人は、下請負人から工事の完成通知を受けたときは、20日以内のできるだけ早い日に検査を完了しなければなりません。また、当該検査完了後、下請負人が申し出た日が引渡日となりますが、約定完成日から20日以内の一定の日に引渡しを受ける旨の特約がある場合は、その特約日を引渡日とすることができます。（24条の4）

◇ 特定建設業者である元請負人（元請業者の場合に限らない）の下請負人に対する引渡しや支払に関する義務

• 元請負人が特定建設業者である場合は、引渡しや支払いについて次のように義務が強化されています。ただし、特定建設業者たる元請負人から請け負った下請負人が、特定建設業者の場合や、資本金が4,000万円以上の場合には、その適用はありません。（24条の6、令7条の2）
• 下請代金の支払期日は、下請負人からの引渡日（もしくは特約日）から50日以内のできるだけ早い日に定めなければなりません。
• 下請代金の支払期日が定められなかったときは引渡日（もしくは特約日）が支払期日となります。もし、引渡日（もしくは特約日）から50日を超えた日を支払期日に定めても50日目が支払期日となります。
• もし、上記の定めによる支払期日までに下請代金の支払をしなかった場合は、下請負人に対して、引渡日から起算して51日目から実際に支払った日までの遅延利息（年率14.6%）を支払う必要があります（則14条）。
• 下請代金として、一般の金融機関による割引が困難な手形を交付してはいけません。割引が困難な手形とは、手形期間が120日を超える長期手形のことで、将来的には60日以内とするよう努める必要があるとしています（建設業法令遵守ガイドライン）。

〇 建設業法令遵守ガイドライン

• この他、発注者の元請業者に対する義務や禁止行為、元請負人の下請負人に対する義務や禁止行為については、それぞれ「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」、「元請負人と下請負人間における建設業法令遵守ガイドライン」に具体的に書かれています（国土交通省（法令遵守）を参照）。

〇 行政指導・行政処分等

◇ 注文者に対する勧告

• 国土交通大臣（都道府県知事）は、注文者（独禁法上の事業者でない者＝公的発注機関）が、不当に低い請負代金や不当な使用資材等の購入強制を禁じた建設業法の規定（19条の3～4）に違反していると認めるときは、当該注文者に対し必要な勧告をすることができます（19条の6）。
• ◆法改正により、国土交通大臣（都道府県知事）は、税込請負代金が500万円未満（建築一式工事では同1,500万円未満）の工事を除き、注文者（発注者、建設業者）が、著しく短い工期を禁じた建設業法の規定（19条の5）に違反していると認めるときは、当該注文者に対し必要な勧告（勧告に従わないときは公表）をすることができます（2020/10/01改正施行19条の6）。

◇ 建設業者に対する勧告

• 国土交通大臣（都道府県知事）は、建設業者に対して、建設工事の適正な施工を確保し、又は建設業の健全な発達を図るために必要な指導、助言及び勧告を行うことができます（41条）。

◇ 特定建設業者に対する勧告

• 国土交通大臣（都道府県知事）は、特定建設業者が元請業者の場合で、その下請業者が労働者に対する賃金支払を遅滞したとき、当該特定建設業者に対して、支払を遅滞した賃金のうち当該工事における賃金相当額を立替払することなどを勧告することができます（41条）。
• 国土交通大臣（都道府県知事）は、特定建設業者が元請業者の場合で、その下請業者が当該工事の施工に関し第三者に損害を加えたとき、当該特定建設業者に対して、第三者が受けた損害と認められる金額を立替払することをなどを勧告することができます（41条）。

◇ 建設資材製造業者等に対する勧告及び命令等

• ◆法改正により、国土交通大臣（都道府県知事）は、建設業者の違反行為に対し指示をする場合、当該違反⾏為が建設資材に起因するものであると認められ、当該建設業者に対する指⽰のみでは再発防⽌が困難と認められるとき 、建設資材製造業者等に対しても再発防⽌措置を勧告することができ、更に当該建設資材製造業者が指示に従わないときは公表や命令もできるようになりました。（2020/10/01改正施行41条の2）。 耐震補強工事に使用された部材の製作会社が意図的に工程を省いた疑いのある製品を納品した事案から設けられた規定とのことです。

◇ 建設業者に対する立入検査及び監督処分

• 国土交通大臣（都道府県知事）は、建設業者に対し、その業務、財産若しくは工事施工の状況につき、必要な報告を求め、営業所等に立入検査をすることができます（31条）。
• 国土交通大臣（都道府県知事）は、建設業者が、建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたときかその恐れが大であるとき、請負契約に関し不誠実な行為をしたとき、法人・役員・使用人がその業務に関し他の法令に違反し建設業者として不適当なとき、一括下請負の禁止に違反したとき、主任技術者又は監理技術者が施工管理に著しく不適当なとき、許可のない建設業者と下請契約を締結したとき、特定建設業者に対する41条の勧告に従わなかったときなどで、当該建設業者に対し、指示処分をし、1年以内の営業の全部又は一部の停止を命じ、又は許可の取消をすることができます（28条、29条）。

◇ 公正取引委員会への措置請求

• 国土交通大臣（都道府県知事）は、建設業者が下請負人への公正な取引を定めた建設業法の規定（19条の3～4、24条の3～6）に違反し、その事実が独占禁止法に違反していると認めるときは、公正取引委員会に対し適当な措置をとるよう求めることができるとしています（42条）。

〇 刑罰

◇ 罰則の内容

• 罰則は、建設業者に対しては、最も厳しいもので3年以下の懲役又は300万円以下の罰金となっており、許可を受けないで建設業を営んだ場合、特定建設業者でないのに限度額を超えて下請契約を締結した場合、営業停止処分に違反して営業した場合、虚偽又は不正により許可を受けた場合などが該当します（47条）。この他に、6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金（50条）、100万円以下の罰金（52条）、30万円以下の罰金（55条）の刑があります。

◇ 両罰規定

• 法人の代表者、使用人、従業員が、その法人の業務に関し47条、50条、52条に掲げる規定違反で刑罰を科されたときは、その法人に対しても最大で1億円の罰金刑が科されます（53条）。