【 休業(補償)給付 】とは、労働者が業務上または通勤による傷病等の療養のため休業することによって減少する賃金を補填するために支給される保険給付です。①療養のため、②労働することができないために、③賃金を受けない日の第4日目から支給されます。(14条)
休業(補償)給付の支給額は、1日につき給付基礎日額の60%に相当する額です。ただし、通院等のため、所定労働時間の一部のみ労働する場合は、1日につき給付基礎日額から支払われる賃金を控除した額の60%に相当する額となります。(14条)
休業(補償)給付の支給期間は、休業した4日目から休業が続く限りですが、上記①~③の休業の条件のいずれかが満たさなくなった場合(例えば①治癒もしくは症状固定となった、②就労することが可能となった、③会社から給付基礎日額の60%以上の賃金が支払われるようになったなどの場合)は、休業(補償)給付は打ち切られます。また、「傷病補償年金」が支給される場合や、「障害補償年金」もしくは「障害補償一時金」が支給される場合も、休業(補償)給付は打ち切られます。
休業(補償)給付の請求手続は、「休業(補償)給付支給請求書」(業務上は8号様式、通勤は16号の6様式)を所轄労働基準監督署長に提出します(則13条)。
【 休業特別支給金 】とは、休業(補償)給付に上乗せして支給される特別支給金です。休業特別支給金の支給要件は、休業(補償)給付と同じです。(特別支給金規則3条)
休業特別支給金の支給額は、1日につき給付基礎日額の20%に相当する額です(所定労働時間の一部のみ労働する場合の支給額の計算方法も休業(補償)給付と同様です)。(特別支給金規則3条)
休業特別支給金の支給期間は、休業(補償)給付が支給されている期間です。
休業特別支給金の請求手続は、「休業(補償)給付支給請求書」が休業特別支給金の支給申請書を兼ねています。
休業(補償)給付と休業特別支給金を合算すると、実質的な休業(補償)給付額は、1日につき休業給付基礎日額の(60%+20%=)80%に相当する額になります。
【 傷病(補償)年金 】とは、労働者の業務上または通勤による傷病等に係る療養の開始後1年6か月を経過した日において、当該傷病等が治っておらず、当該傷病等による障害の程度が「傷病等級」の1級から3級に該当する場合、労働基準監督署長の職権で休業(補償)給付に替えて支給される保険給付です(12条の8、則18条)。傷病補償年金が支給されると、休業(補償)給付は打ち切られます(18条)。
傷病(補償)年金の支給額は、1年につき、傷病等級1級で給付基礎日額の313日分、2級で同277日分、3級で同245日分です(法別表第一)。
傷病(補償)年金の支給期間は、休業(補償)給付に替えて支給開始されてから、当該障害の状態が継続している間です(12条の8)。
傷病(補償)年金の支給手続は、所轄労働基準監督署長が、療養の開始後1年6か月を経過した日以後1か月以内に、当該労働者から「傷病の状態等に関する届」に医師等の診断書等を添えて提出させ、支給を決定します(則18条の2)。労働者による申請は必要ありません。
なお、業務上による傷病等に係る療養の開始後3年を経過した日において、傷病補償年金を受けている場合、または、同日後において傷病補償年金を受けることとなった場合は、使用者は、当該3年を経過した日、または、傷病補償年金を受けることとなった日において、労基法81条の規定により打切補償を支払ったものとみなされ(19条)、労働者が業務上の傷病等に係る療養のために休業する期間とその後30日間は解雇できないとしている解雇制限(労基法19条)がなくなります。
【 傷病特別支給金 】とは、傷病(補償)年金の受給権者に対して上乗せして支給される一時金の特別支給金です(特別支給金規則5条の2)。
傷病特別支給金の支給額は、1級で114万円、2級で107万円、3級で100万円です(特別支給金規則別表第一の二)。
傷病特別支給金の請求手続は、所轄労働基準監督署長に申請書の提出が必要ですが、実務上は傷病(補償)年金の支給決定により傷病特別支給金の申請があったものとして扱われているとのことです。
【 傷病ボーナス特別支給金(傷病特別年金) 】とは、傷病(補償)年金の受給権者に対して上乗せして支給されるボーナス特別支給金(年金)です(特別支給金規則11条)。
傷病特別年金の支給額は、1年につき、1級で(ボーナスなど特別給与から計算される)算定基礎日額の313日分、2級で同277日分、3級で同245日分です(特別支給金規則別表第二)。傷病(補償)年金の計算方法とは、基礎日額は異なりますが、日数は同じです。
傷病特別年金の請求手続は、所轄労働基準監督署長に申請書の提出が必要ですが、実務上は傷病(補償)年金の支給決定により傷病特別年金の申請があったものとして扱われているとのことです。
【 障害(補償)給付(障害(補償)年金または障害(補償)一時金) 】とは、労働者が業務上または通勤による傷病等が治癒(症状固定)したものの、障害が残った場合に支給される保険給付です。当該傷病等による障害の程度が「障害等級」の1級から7級に該当する場合は「障害(補償)年金」が、8級から14級に該当する場合は「障害(補償)一時金」が支給されます。(15条)。
障害(補償)年金の支給額は、1年につき、障害等級1級で給付基礎日額の313日分、2級で同277日分、3級で同245日分、4級で同213日分、5級で同184日分、6級で同156日分、7級で同131日分です(法別表第一)。
障害(補償)一時金の支給額は、障害等級8級で給付基礎日額の503日分、9級で同391日分、10級で同302日分、11級で同223日分、12級で同156日分、13級で同101日分、14級で同56日分です(法別表第二)。
障害(補償)年金の支給期間は、当該障害の状態が継続している間ですが、障害の程度に変更があったため、新たに他の障害等級に該当するに至った場合は、その等級の障害(補償)年金に変更されます(8級以下に軽減した場合は障害補償一時金を支給し、年金支給は打ち切られます)(15条の2)。
障害(補償)給付の請求手続は、「障害(補償)給付支給請求書」(業務上は10号様式、通勤は16号の7様式)に、負傷・発病の年月日、災害の原因・発生状況、平均賃金、厚生年金保険等の被保険者資格の有無について事業主の証明を受け、傷病等が治癒したとする医師の診断書等や、同一の事由により厚生年金保険の障害厚生年金等が支給される場合はその支給額を証明する書類を添え、所轄労働基準監督署長に提出します(則14条の2)。
【 障害特別支給金 】とは、障害(補償)年金の受給権者に対して上乗せして支給される一時金の特別支給金です(特別支給金規則4条)。
障害特別支給金の支給額は、1級で342万円、2級で320万円、3級で300万円、4級で264万円、5級で225万円、6級で192万円、7級で159万円、8級で65万円、9級で50万円、10級で39万円、11級で29万円、12級で20万円、13級で14万円、14級で8万円です(特別支給金規則別表第一)。
障害特別支給金の請求手続は、「障害(補償)給付支給請求書」が障害特別支給金の支給申請書を兼ねています。
【 障害ボーナス特別支給金(障害特別年金または障害特別一時金) 】とは、障害(補償)年金の受給権者に対して上乗せして支給されるボーナス特別支給金です。障害等級が、1級から7級に該当する場合は「障害特別年金」が、8級から14級に該当する場合は「障害特別一時金」が支給されます。(特別支給金規則7条、8条)
障害特別年金の支給額は、1年につき、障害等級1級で(ボーナスなど特別給与から計算される)算定基礎日額の313日分、2級で同277日分、3級で同245日分、4級で同213日分、5級で同184日分、6級で同156日分、7級で同131日分です(特別支給金規則別表第二)。障害(補償)年金の計算方法とは、基礎日額は異なりますが、日数は同じです。
障害特別一時金の支給額は、障害等級8級で(ボーナスなど特別給与から計算される)算定基礎日額の503日分、9級で同391日分、10級で同302日分、11級で同223日分、12級で同156日分、13級で同101日分、14級で同56日分です(特別支給金規則別表第三)。障害(補償)一時金の計算方法とは、基礎日額は異なりますが、日数は同じです。
障害特別年金または障害特別一時金の請求手続は、「障害(補償)給付支給請求書」が 障害特別年金や障害特別一時金の支給申請書を兼ねています。
【 遺族(補償)給付(遺族(補償)年金または遺族(補償)一時金)】とは、労働者が業務上または通勤による傷病等によって死亡した場合、その者の一定の遺族に対し支給される保険給付で、遺族(補償)年金または遺族(補償)一時金があります。(16条)。
遺族(補償)年金 を受けることができる遺族は、死亡した労働者と死亡当時に生計を同じくしていた①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹で、優先順位の最上位の者だけが受給できます。ただし、妻以外の者は、労働者の死亡当時次の要件に該当した場合に限られます。(16条の2)
遺族(補償)年金の支給額は、1年につき、受給権者の人数に応じ、受給権者が1人の場合は給付基礎日額の153日分(妻が55歳以上または一定の障害の状態にある場合は同175日分)、2人の場合は同201日分、3人の場合は同223日分、4人以上の場合は同245日分となります。受給権者が2人以上の場合は、この額を受給権者の人数で割ったものが1人当たりの支給額となります。受給権者の数に増減を生じたときは、遺族補償年金の額が改定されます。(16条の3、法別表第一)
遺族(補償)年金の受給権者が、死亡したとき、姻婚したとき、直系血族または直系姻族以外の者の養子となったとき、離縁によって死亡した労働者との親族関係が終了したとき、そのほか受給資格の年齢や障害であることの要件を満たさなくなったとき、その受給権は消滅します。この場合において、同順位者がなくて後順位者があるときは、次順位者に遺族補償年金を支給します(16条の4)。
遺族(補償)年金の受給権者の所在が1年以上明らかでない場合は、当該遺族(補償)年金は、同順位者があるときは同順位者の、同順位者がないときは次順位者の申請によって、その所在が明らかでない間、その支給を停止することができます。(16条の5)
遺族(補償)年金の請求手続は、「遺族(補償)年金支給請求書」(業務上は12号様式、通勤は16号の8様式)に、負傷・発病の年月日、災害の原因・発生状況、平均賃金、厚生年金保険等の被保険者資格の有無について事業主の証明を受け、死亡診断書など死亡を証明する書類や、請求人と死亡した労働者との身分関係を証明することができる戸籍謄本などを添え、所轄労働基準監督署長に提出します(則15条の2)。
遺族(補償)一時金は、①労働者の死亡の当時遺族(補償)年金を受けることができる遺族がないとき、または、②遺族(補償)年金の受給権者の権利が消滅した場合で他に当該遺族(補償)年金を受けることができる遺族がなく、かつ、当該労働者の死亡に関し支給された遺族(補償)年金及び遺族(補償)年金前払一時金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないときに、遺族(補償)年金の受給資格のない一定の親族(生計を同じくしていなかった妻など)に支給されます。(16条の6)
遺族(補償)一時金の支給額は、①の場合で給付基礎日額の1000日分です。また、②の場合で給付基礎日額の1000日分から支給された遺族(補償)年金及び遺族(補償)年金前払一時金の合計額を控除した額です。(16条の8、法別表第二)
遺族(補償)一時金の請求手続は、「遺族(補償)一時金支給請求書」(業務上は15号様式、通勤は16号の9様式)に、負傷・発病の年月日、災害の原因・発生状況、平均賃金について事業主の証明を受け、死亡診断書など死亡を証明する書類や、請求人と死亡した労働者との身分関係を証明することができる戸籍謄本などを添え、所轄労働基準監督署長に提出します(則16条)。
【 遺族特別支給金 】とは、遺族(補償)年金または遺族(補償)一時金の受給権者に対して上乗せして支給される一時金の特別支給金です(特別支給金規則5条)。
遺族特別支給金の支給額は、300万円です。遺族特別支給金の受給権者が2人以上の場合は、この額を受給権者の人数で割ったものが1人当たりの支給額となります。(特別支給金規則5条)。
遺族特別支給金の請求手続は、「遺族(補償)年金支給請求書」または「遺族(補償)一時金支給請求書」が遺族特別支給金の支給申請書を兼ねています。
【 遺族ボーナス特別支給金(遺族特別年金または遺族特別一時金) 】とは、遺族(補償)給付の受給権者に対して上乗せして支給されるボーナス特別支給金です。遺族(補償)年金の受給権者には「遺族特別年金」が、又、遺族(補償)一時金の受給権者には「遺族特別一時金」が支給されます。(特別支給金規則9条、10条)
遺族特別年金の支給額は、1年につき、受給権者の人数に応じ、受給権者が1人の場合は(ボーナスなど特別給与から計算される)算定基礎日額の153日分(妻が55歳以上または一定の障害の状態にある場合は同175日分)、2人の場合は同201日分、3人の場合は同223日分、4人以上の場合は同245日分となります。受給権者が2人以上の場合は、この額を受給権者の人数で割ったものが1人当たりの支給額となります。受給権者の数に増減を生じたときは、遺族特別年金の額が改定されます。(特別支給金規則9条、別表第二)。遺族(補償)年金の計算方法とは、基礎日額は異なりますが、日数などその他の規定は同じです。
遺族特別一時金の支給額は、遺族(補償)一時金の支給要件である①の場合で(ボーナスなど特別給与から計算される)算定基礎日額の1000日分です。また、②の場合で算定基礎日額の1000日分から支給された遺族特別年金及び遺族特別年金前払一時金の合計額を控除した額です。(特別支給金規則10条、別表第三)。遺族(補償)一時金の計算方法とは、基礎日額は異なりますが、日数などその他の規定は同じです。
遺族特別年金の請求手続は、「遺族(補償)年金支給請求書」が 遺族特別年金の支給申請書を兼ねています。
遺族特別一時金の請求手続は、「遺族(補償)一時金支給請求書」が 遺族特別一時金の支給申請書を兼ねています。