入契法の概要と遵守のポイント

〇 入契法の概要

◇ 入契法の目的

• 入契法の目的は、国、特殊法人、地方公共団体等の公共工事の発注者全体を通じて、入札・契約の適正化を図ることです。このために、適正化の基本事項やガイドライン、公共工事発注者による情報の公表、ダンピング受注の防止、施工体制の適正化、不正行為に対する措置などが定められています。

◇ 条文参照

• 入契法（◆2020/10/01改正施行）
• 2020年10月1日付で施行された「新・担い⼿３法改正」（建設業の担い⼿の中⻑期的な育成・確保のため、建設業法・⼊契法・品確法を⼀体として改正したもの）のうち、建設業法の主な改正部分に◆印を付しています。

条項	内容
1条～3条	目的、定義、入札・契約適正化の基本事項
4条～9条	公共工事発注者の発注見通し及び入札・契約情報の公表義務
10条～11条	公共工事発注者の入札・契約に関する不正行為の通報義務
12条～13条	公共工事発注者の入札金額内訳が適正であるかの確認義務
14条～16条	公共工事における一括下請負全面禁止や施工体制台帳作成義務の強化等と、公共工事発注者の施工体制の点検義務等
17条～20条	国による公共工事の入札・契約の適正化指針の作成とその運用
21条～22条	国による情報の収集・整理・提供と関係者への知識普及等

〇 入札・契約適正化の基本事項

• 公共工事の入札・契約においては、次の適正化が図られなければならないとされています（3条）。
• 入札・契約の過程や契約内容における透明性の確保
• 入札参加者の公正な競争の促進
• 談合等の不正行為の排除の徹底
• ダンピング受注の防止
• 契約された工事の適正な施工の確保

〇 公共工事発注者の義務

◇ 毎年度の発注見通しの公表

• 公共工事発注者は、当該年度に発注することが見込まれる工事（予定価格250万円以下を除く）に関し、毎年度2回、4月1日以後遅滞なく、更に10月1日を目途に、次の事項を公表しなければなりません（４条、6条、7条、令2条～3条、令5条～6条）。
• 工事の名称、場所、期間、種別及び概要
• 入札及び契約の方法
• 入札時期（随意契約の場合は契約締結時期）

◇ 入札・契約の基準・過程・結果の公表

• 公共工事発注者は、次に掲げる事項を定めたら遅滞なく公表しなければなりません（5条、6条、8条～9条、令４条、令7条）。
• 一般競争の参加資格及び有資格者名簿
• 指名競争の参加資格及び有資格者名簿
• 競争参加者の指名基準
• (国の場合のみ）低入札価格調査基準
• 公共工事発注者は、工事（予定価格250万円以下を除く）の契約を締結したときは、工事ごとに遅滞なく次の事項を公表し、公表後1年間は掲示又は閲覧しなければなりません。（5条、6条、8条～9条、令４条、令7条）。
• 一般競争の参加資格をさらに定めた場合の参加資格
• 一般競争入札に参加しようとした者の名称、そのうち参加させなかった者の名称とその理由
• 指名競争入札において指名した者の名称とその理由
• 入札者の名称及び入札金額
• 落札者の名称及び落札金額
• 低入札価格調査を行った場合の調査から落札者決定までの経緯
• 公正な取引の秩序を乱すおそれがあるため最低価格の入札者を落札者とせず次順位者を落札者とした場合の入札から落札者決定までの経緯
• 総合評価競争入札（価格その他の条件が発注者にとって最も有利な申込みをした者を落札者とする入札）を行った場合の落札者とした理由
• 契約の内容（契約相手の名称・住所、工事の名称・場所・種別・概要、工事着手・完成の時期、契約金額）
• 随意契約を行った場合の相手方を選定した理由

◇ ダンピング受注防止のための措置

• 公共工事発注者は、ダンピング受注を防止するため、建設業者から提出された内訳書の確認等を実施しなければなりません（13条）。

◇ 施工体制の適正化

• 公共工事発注者は、施工技術者の設置の状況など、工事現場の施工体制が施工体制台帳の記載に合致しているかどうか点検・照合しなければなりません（16条）。

◇ 不正行為に対する措置

• 公共工事発注者は、公共工事の入札・契約に関し、独占禁止法の規定に違反する談合等の行為があると疑うに足りる事実があるときは、公正取引委員会に対し、その事実を通知しなければなりません（10条）。
• 公共工事発注者は、公共工事の入札・契約に関し、建設業法の規定に違反する行為（暴力団関係者であること、公衆災害の発生、令3条使用人の法令違反、一括下請負違反、不適切な下請負契約、施工体制台帳作成等義務違反、技術者の不設置などのほか、新たに◆著しく短い⼯期による契約締結）があると疑うに足りる事実があるときは、建設業許可行政庁に対し、その事実を通知しなければなりません（2020/10/01改正施行11条）。

〇 公共工事受注者の義務

◇ ダンピング受注防止のための措置

• 建設業者は、ダンピング受注を防止するため、公共工事の入札において、入札金額の内訳を提出しなければなりません（12条）。

◇ 施工体制の適正化

• 公共工事の受注者は、（発注者の承諾があったとしても）一括下請負を行ってはなりません（14条）。
• 公共工事の受注者は、施工体制台帳及び施工体系図に関して、建設業法よりも厳しい次の規定が定められています（15条）。
• （特定建設業者であるかどうかや下請契約の金額に関わらず）全ての工事において施工体制台帳及び施工体系図を作成しなければなりません。
• 施工体系図を（工事関係者が見やすい場所に加え）公衆が見やすい場所に掲示しなければなりません。
• 施工体制台帳の写しを発注者へ提出しなければなりません。

〇 各発注者が取り組むべきガイドライン

◇ 「適正化指針」 の作成

• 国は、公共工事の入札・契約の適正化を図るための指針（ガイドライン）を定めなければなりません。指針には、入札・契約適正化の基本事項に従って、次に掲げる内容を定める必要があります。（2020/10/01改正施行17条）
• 入札・契約の過程や契約内容に関する情報の公表
• 入札・契約の過程や契約内容について第三者意見を適切に反映する方策
• 入札・契約の過程に関する苦情を適切に処理する方策
• 公正な競争を促進し、ダンピング受注を防止するための入札・契約方法の改善
• ◆公共工事の施工に必要な工期の確保や地域における公共工事の施工の時期の平準化を図るための方策
• 公共工事施工状況の評価の方策

指針に従った入札・契約の適正化の推進

• 公共工事発注者は、適正化指針に従い、公共工事の入札及び契約の適正化を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければなりません（17条）。
• 国土交通大臣等は、公共工事発注者に対し、適正化指針に従って講じた措置の状況について報告を求めることができ、毎年度、報告を取りまとめ、その概要を公表します（19条）。
• 国土交通大臣等は、公共工事発注者に対し、適正化指針に照らして特に必要があると認められる措置を講ずべきことを要請することができます（20条）。